ダッシュで家探し。Iターン転職先はまさかのブラック企業
前回の記事(退職交渉後にまさかの内定取り消し。一度、辞退した会社に再交渉)では、「内定取り消し→無職確定→すぐに札幌に行こう」という流れでIターン転職を決めたことをぶっちゃけさせてもらいました。
そして、この思い切りがさらに思いもよらない展開になっていきます。
今回はせっかくIターンしたはずが、新卒以来のブラック企業に入ってしまい、過労死寸前になるお話です。
今回のトピック一覧
Iターン転職が決まり、急ピッチで家を決める
復活再当選が決まったのが8月12日。入社日まであと2週間少々。
急ピッチで家探しをスタートして早々にほっとハウスという地元の情報に強い不動産屋さんのナイスな担当者と出会う。
何度か電話で冬場の雪の状況を確認して、内覧候補を数日でピックアップできた。
入社まであと1週間・・部屋を決めに再び札幌へ
再び、札幌に着くとあいにくの大雨。土砂降りのなか、20代前半の若いお兄さんが迎えに来てくれた。
出身地が函館、バンド好き、10歳近く歳が離れているのに私が学生時代に全青春を捧げたsiam shadeの話も通じる。
道中の音楽談義が盛り上がり、朝から夕方までぶっ通しで8物件の内覧もあっという間に終わった。
予定通り、即日物件が決まった。予算内で思ったよりもいい物件に出会えてラッキーだった。
(部屋からの眺め)
物件概要
- 場所:北円山
- 建物:4階建の4階
- 間取り:2LDK、約45㎡
- 家賃:7.2万円
- アクセス:地下鉄駅、円山公園・北海道神宮まで徒歩15分くらい
いざ札幌へ移住(入社前日)
この日は普段は来ない台風が直撃した後で風が強く少し蒸し暑かった。それでも綺麗な青空、空気もよく、新しい生活にワクワクした。
(近所の道。大通りから数本、中に入ると深呼吸したくなる気持ち良さ)
午後は部屋には西日が入り、暑かった。人生で初めてのクーラーなしの生活が不安になったが、夜には涼しくなり、すぐに杞憂だとわかった。
(入居日の夕日)
転職Tips
たとえ、知人ゼロ、土地勘ゼロでもやりたいと思ったらやってみよう。仮に失敗したとしてもそこから学べばいい。やらなかったことを後悔するより遥かにマシ。
初出社からカルチャーショックの連続
初日は8時半出社(始業は9時)との案内通りに受付に到着した。ただ、担当者は時間になっても現れず。
結局流れで8時50分からの全体朝礼に参加し、自己紹介を済ませた。
ここからはカルチャーショックの連続
担当者が現れないのは序の口で、さらに驚いたことがあった。
挨拶の時に手を後ろで組んでいるのがよくないと注意されたことだった。
次に驚いたのは、年下の男性社員は「クン」づけで呼ばれたこと。年齢や性別で相手の呼び方を変えるカルチャーには馴染みがなかったから違和感が大きかった。
郷に入れば郷に従え。東京以外で仕事をしたことがないからしょうがないと割り切ることにした。
(割り切れたのは毎朝の青空のおかげ)
毎日の朝礼、週1の掃除当番、労基法完全無視
朝礼は毎日8時50分スタート。5分前には集合が求められる。始業時間は9時。しかし、朝礼に遅れようものなら厳重注意。
全体の朝礼に所属部門ごとに朝礼をさらに行う。課長がチーム全体(10数名ほど)に事務連絡や社内に情報共有を行う。
どう考えてもメールまたは個別に伝えれば事足りるレベルのことを大人数を拘束して行う。
掃除当番になれば8時25分の掃除開始が求められ、これも少しでも遅れようものなら厳重注意。当然、労働時間にはカウントされない。
このときに、みなし残業時間が60時間という怪しげな労働契約書だった理由に合点がいった。
転職Tips
火のないところに煙は立たない。60時間のみなし残業、始業前に出社を強制するのはただの法令違反。リスクの取りすぎには要注意!
ブラック企業を久々に実感。日増しに悪化する労働環境
早々にブラック企業に入ったことは自覚した。
それでも、北海道経済に貢献したいと思って札幌本社の会社を選んだ以上は、できる限りやろうと思っていた。
約10年ぶりに新卒の時の気持ちを思い出す
新卒の時は自分たちの仕事を通じて日本経済を活性化しようと思って月350時間近くは働いていた。
法学部出身なのに全く勉強しなかったおかげで、残業代が欲しいなんて思うことは一度もなく、とにかく結果に飢えていた。
今回はずっと住みたかった北海道で人を育てる立場で入社している。さらに、新卒入社の社員もいる。
これらの条件が重なって、ブラックな環境でも社員が成長できる環境づくりに貢献したい。そんな使命感を強く持っていた。
役職者は自己保身に必死。組織内に自浄作用はない。
最初の1ヶ月は社内のオペレーション理解というタテマエで事実上、引き継ぎもゼロで放置状態だった。
そこから、1週間ほどで事態が急転する。一応、チームリーダー(主任)ということで突如、トラブル先への謝罪訪問なるものにいくことになった。
ここでの課長の対応を見て、この組織の問題の深刻さを実感した。
◆ 出張前の出来事
- トラブル先のクライアント訪問なので再発防止策を具体的に準備していた。
- 顧客との接点が今のところないので、出張前日に最終確認に課長にプランを確認する。
- ところが、この出張の責任者である課長は全てを丸投げ。
- その結果、資料準備は日付が変わるまでかかった(もちろん課長は先に帰る)
◆ 出張当日のびっくり
- 日帰り3アポなので、朝は5時台に起きて新千歳空港へ。
- 面談のシナリオを訪問直前になぜかこちらが詰められる(顧客情報は確実にあなたより少ない!)
- 面談中では平謝りか部下を売るかのどちらかでその場をしのぐ。
- おまけに、スケジュールを詰めすぎて朝昼は食事抜き。
転職Tips
法令遵守や業務効率に対する意識は地方都市は全く違う。東京での経験や価値観をそのまま活かせると思うと地獄を見る。
長時間労働よりしんどいのは職業倫理に反する仕事
さらに衝撃的な状況が次々に露呈する。
出張で顧客に私を紹介した時点で引き継ぎ完了ということらしく、無茶振りの日々がスタートする。
業務クオリティ改善よりも新規開拓優先・・
給与計算ベンダーが誤処理の根本原因の解決をしないまま、毎月の計算を進めている。いつ誤処理ともわからない恐ろしいオペレーションを放置する。
正しい金額の給与を所定期日に支払う、これは従業員を雇用する会社にとって一丁目一番地の業務。給与計算ベンダーは、この業務を受託してのだ、という意識がない。
これは、キャリアの大半を人事として過ごしてきた人間からすると信じられない光景だった。ただ、このまま放置するわけにいかないので、トラブル案件を巻き取り、解決にあたった。
(札幌の住環境の良さは健在。仕事は相当厳しい・・)
しかし、会社は新規開拓の開拓を進めるために、既存客のトラブル先送りを繰り返す。現場はすでに疲弊しきっていた。
感覚を麻痺させるか、限界を感じて辞めるかの2択になっていた。
朝4時まで働いても終わりが見えない泥沼に・・
引き受けた以上はなんとか担当した顧客へのサービス改善に全力を割こうと決めた。
案件によっては引き継ぎゼロで、たまたま電話をとったから対応をスタートするというケースもあった。
(2016年は10月下旬に雪が積もった@大通公園)
このような無茶ぶりがかさなったので、終電や土曜出勤は当たり前。ひどい日は平日朝4時まで対応に追われた。
誰にも感謝されないのに果てしなく働き続けるのは心身にとてつもないダメージなることを実感する日々だった。
さらなる対応案件増加要求。このままじゃ殺される。
サービスクオリティの品質改善ができなければ会社を辞める意向は10月上旬に伝えていた。
私の提言に対し、理解を示しているという反応はしていたものの、トラブル収束前に追加の案件を無茶ぶりするのは変わらなかった。
10月中旬には限界に達し、部長、役員に対しても惨状を報告し、改善を求めた。上層部は異常事態を察知したものの動きは鈍かった。
(北海道神宮の澄み渡った空気を吸って、なんとか気持ちを保っていた。)
当時は、日に日に体は動かなくなり、タクシーで通勤していた。当然自腹で、毎月3万円近く赤字になっていた。
大げさな表現ではなく、このままでは殺されると思い、正式に退職願を出し、わずか3ヶ月でIターン転職へのチャレンジは終わりを迎えた。
(コラム)新規獲得ばかりを考える会社は必ず淘汰される
新卒入社した会社は入社直後に経営危機に陥りました。
財務的に見れば、多額の固定費をかけて事業開発を進めたものの、売り上げが伸びずキャッシュがショートしたわけです。
しかし、数字は結果でしかなく、原因分析には不十分です。
業績不振の会社の現場は悲惨
詳細はここでは割愛しますが、規模の拡大を目指して、顧客獲得コストがかかる新規に注力した結果、既存客の一斉離反が起こります。
ここでの引き留めはもはや利益を産まないやり取りの連続です。そのため、新規獲得を目指して穴埋めを図ります。
それでも、既存客が離反するようなサービスを売るのは難易度が高く、売れたとしても次のクレームの火種になります。
廉価競争を生み出すアウトソーサーは時として社会悪になる
私が札幌で経験したケースではマーケット全体の健全性という観点から見てもよくないは明らかです。
というのも、1社の低品質なサービスを生み出す会社が以下の流れでマーケットを破壊していくからです。
- 競合他社はサービス品質維持・向上のために投資をしてサービス品質を保っている。
- しかし、サービスクオリティが低い会社が低価格戦略でゲームチェンジを図ろうとする。
- 顧客側はアウトソーサーの詳細なコスト構造までは知らないので、サービスコストを下げようとする。
- その結果、顧客からの価格低下の圧力が高まり、品質の向上を目指す会社の経営まで圧迫される。
自分たちの明日の食い扶持のために顧客の未来を犠牲にする光景を過去に目の当たりにしました。
この消耗戦は誰のためにもなりません。当時在籍した会社はその後倒産し、新規顧客は思うような価値が得られずに憤慨したことでしょう。
自社の存続のためにマーケットを破壊する、顧客の未来を犠牲にするのは明らかにルール違反です。