転職で年末調整に間に合わなかった時の確定申告ガイド
年末調整の時期に書類の提出期日を過ぎてしまうと人事から「間に合わなかったら確定申告してくださいね!」とお叱りを受けることがあります。
年末調整では、全社員の控除書類の回収や1年分の所得税の見直しがあるため、毎月の給与計算よりも業務量は一気に増えます。
そのため、イレギュラー処理が難しく。年末に転職してきた人には確定申告を案内せざるを得なくなってしまいます。
そこで、今回はやむを得ず確定申告が必要になってしまうケースと具体的な手続き、ご案内していきます。
今回のトピック一覧
確定申告が必要になる場合とは?
年末調整ができなかった場合は確定申告が必要です。というのも、所得税の非課税項目を毎月の給与計算では反映できない場合があるからです。
では、実際に確定申告が必要になる場合(3つのケース)を見ていきましょう。
① 年末の転職で前職の源泉徴収票を用意できなかった場合
年末に転職する場合は、入社先の年末調整期限内に前職の源泉徴収票が入手できなければ、確定申告が必要になります。
12月下旬の賞与支給時に調整をする会社もありますが、転職したての場合は、このフローにも乗れないため、確定申告になる可能性が濃厚です。
運用は各社異なるため、入社先の人事担当者への確認をお勧めしますが、前提として、12月入社の場合は基本的に確定申告になると覚えておきましょう。
② 控除書類が年末調整期限までに届かなかった場合
給与支給日が毎月5日や10日になる場合は締め切りが早い場合は源泉徴収票がそろっていても、保険料の控除書類が手元に届かない場合があります。
この場合も確定申告になる場合が多いですが、金額だけでもわかっていれば、証明書の原本提出は後でも対処してくれることがあるため、早めに人事に相談しましょう。
③ 所得控除できない控除項目がある場合
具体的には以下の3つに該当する控除が発生している場合は、年末調整で処理ができないため、確定申告が必要になります。
- 雑損控除(災害や盗難にあった場合)
- 医療費控除(1年間の医療費が10万円を超えた場合)
- 寄附金控除(公益社団法人への寄付やふるさと納税など)
この場合は、保険料控除や住宅ローン控除等をあらかじめ年末調整をしてもらった状態で、確定申告をすると一手間省けます。
確定申告の期間と必要になる書類は?
確定申告は期間内に管轄の税務署に書類を届け出る必要があります。
必要書類は年末調整時に必要になる書類と大差がないため、年末年始に届いた書類を大切に保管しておきましょう。
確定申告の期間は毎年同時期
確定申告の期間は毎年、2月15日~3月15日です。祝日と重なれば締め切りが1日後ろ倒しされます。
必要書類は源泉徴収票と各種控除証明書
事前準備は以下の3つのステップで完結します。
【STEP1】 まずは年内に勤務した全ての会社の源泉徴収票を用意する
公的機関の会計年度は3月末ですが、所得税の計算は暦通りの1年が計算期間です。そのため、1月から12月に在籍した会社の源泉徴収票が必要になります。
例えば、会社1月~8月までA社で働き、12月に転職し、B社で働き始めたという場合は、A社とB社両方の源泉徴収票が必要になります。
【STEP 2】 ブランクがある場合は社会保険料控除証明書も忘れずに準備する
もし、ブランクがあり、離職中に国民年金などの社会保険料を払った場合は、社会保険料控除も申告しましょう。
具体的には以下の書面が例年11月頃には届きますが、もし手元にない場合は近くの年金事務所に問い合わせましょう。
問い合わせ先は、日本年金機構ウェブサイト「全国の相談・手続き窓口」で確認できます。
(出典:日本年金機構ウェブサイト「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書様式)
【STEP 3】年末調整時に使用する控除書類を用意する
転職に関係なく、生命保険料や地震保険料、住宅ローンの書類を用意しましょう。年末調整時とは異なりますが扶養控除も申告対象になります。
具体的な要件については下表をご覧ください。
(出典:国税庁HP「給与所得者向けリーフレット」より)
【STEP 4】年末調整できない控除証明書類を用意する
以下の3つはもともと年末調整できない項目なので、転職時期に関係なく確定申告が必要になります。
基本的に国税庁のHPで解説されていますが、馴染みがないとわかりづらいので、参考になるリンクをまとめてご紹介しておきます。
1)雑損控除
・MFクラウド確定申告「確定申告の雑損控除について」
2)医療費控除
・MFクラウド確定申告「確定申告の医療費控除」
3)寄附金控除(ふるさと納税等)
認定NPOや公益社団法人等は各団体から通知が届くのを待っていれば問題ありません。
ふるさと納税については仕組みが少し複雑なので、解説サイトの情報を確認しておくと手続きをスムースに進めやすいでしょう。
・ふるさとチョイス「意外と簡単!ふるさと納税をした場合の確定申告」
準備が整ったら申告書を作成しましょう
申告書は税務署に取りに行く必要はなく、国税庁HPからプリントアウトし、必要事項を記入すれば問題ありません。
なお、記入方法についてはミスがあると後日の手続きが面倒になるため、多少読みづらくても国税庁のウェブサイトを参照されることをオススメします。
どのページにアクセスするのか?
国税庁HPの「所得税(確定申告書等作成コーナー)」にある「確定申告書特集」にまずはアクセスします。
申告書類のダウンロードはどうする?
STEP1: 確定申告書等作成コーナーへ進
STEP2: 申告書作成開始へ進む
STEP3: 書面提出を選ぶ(e-Taxの準備は手間がかかるのでこちらがオススメです)
STEP4: 書面提出を選ぶ(e-Taxの準備は手間がかかるのでこちらがオススメです)
STEP5: 会社員の収入のみであれば一番左の「作成開始」をクリック
以上の流れで入力画面にたどり着いたら、そこから先はページの案内に沿って入力を進めましょう。
申告後はどうなる?
期日までに税務署に書面が届いた後は、手続きが完了した後に還付または追徴の連絡が書面で届きます。
還付の場合は、申告書に記載した銀行口座に入金され、追徴の場合は後日、納付書で支払いを完了させます。
以上の流れで、確定申告が終わり、確定した課税所得額をもとに住民税が決定されるという流れになります。
住民税の通知が6月という中途半端な時期に届くのは、所得額の確定を待っての算出となるためです。
まとめ
確定申告は非常に複雑なイメージがありますが、集中して行えば1日もかからない手続きです。
また、届出の際は税務署に並んで手続きをするイメージがありますが、給与以外の所得がなければ、以下の4つのアクションだけで申告は完了します。
- 申告用紙をプリントアウトする
- 控除項目の計算を計算し、用紙に記入する
- 必要書類を添付する
- 書類一式を所轄の税務署に郵送する
面倒に感じる手続きですが、会社に天引きしてもらうことに慣れてしまい、国税の仕組みを全く知らないのは納税者として大きな損失になります。
諸外国では会社が個人に変わって納付する仕組みがないため、国民は税金に敏感であるがゆえに税制に工夫がありますが、日本はこの意識が低いので、会社員が損をする税制になりやすいです。
面倒な事務処理をする機会に、この国の税制を知るために年間で控除されている税額をしっかり確認しておくことをオススメします。
もし税額をセーブしたい場合は確定拠出年金やふるさと納税などを活用して、将来につながるお金の使い方を自分なりにも検討してみましょう。
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