転職・退職の時に必ず押さえておきたい3つの年金基礎知識
転職の時は年収ばかりに意識が向かいがちですが、支出面を意識することも大切です。
支出は「公的支出(社会保険・税金)」「私的支出(家賃・生活費等)」に分けて整理することが大切です。
退職時に負担額の大きさに気づくのが社会保険料(健康保険・年金)です。
今回は社会保険料のうち、会社員が転職・退職の時に押さえておきたい3つの年金知識を説明していきます。
健康保険は年金よりもボリュームが多いため「転職・退職の時に知らないと損をする健康保険3つのポイント」で別途解説しています。
今回のトピック一覧
1.年金の基礎知識
日ごろは年金と一言で済ましてしまいがちですが、実際は「国民年金(基礎年金)」「厚生年金」で構成されています。
(1)公的年金は2階建て
日本の居住者(20歳以上60歳未満のすべての人)が1階部分の国民年金(基礎年金)に加入しています。
2階部分は、会社員や公務員が加入する厚生年金があり、社会保険加入要件を満たす会社員はすべて厚生年金に加入しています。
(出典「日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省」より)
(2)3つの加入区分がある
会社員(厚生年金加入)の場合は2号被保険者になり、年収130万円以下の所得制限を満たす扶養親族は3号被保険者になります。
年金の3つのカテゴリ
- 第1号被保険者:自営業者など
- 第2号被保険者:会社員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者の配偶者(年収130万円以下)
(出典「日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省」より)
(3)年金の一部は運用されている
年金積立金(年金支給に充当された金額の残高)はGPIFが将来の年金原資を増を目指して、金融市場で運用しています。
(出典「教えて!年金積立金運用 誰が運用しているの?」より)
運用成果の是非をめぐって時折ニュースになるトピックなので、この機会にひとつの論点として押さえておきましょう。
2.厚生年金を理解する
保険料は会社に納付が義務付けられているため、給与(賞与)支給の際は控除済みとなっています。
そのため、保険料率や計算方法を考える機会が少ないのが実情ですが、何も知らなければ引退後にショックを受けることになりかねません。
そこで、ここでは、退職時に最低限、理解しておきたい4つのポイントをおさらいしていきます。
(1)所得に応じて保険料は高くなる
国民年金保険料は一律(平成29年度:16,490円)ですが、厚生年金保険料は所得に応じて高くなります。
平成29年の場合は、報酬月額が185,000円を超えると国民年金よりも保険料が高くなる(保険料:17,273円)計算です。
(2)会社が半額を負担
一方で、保険料額の半額は会社負担となるため、給与から控除されている額の倍の金額が積み立てられていることになります。
国民年金保険料と同額の厚生年金保険料を支払っても、積み立て額は2倍なので、将来の給付時のメリットが得られる仕組みになっています。
(3)計算方法はシンプル
「下表に該当する標準報酬×保険料率」の計算結果が毎月の保険料になります。
標準報酬月額一覧
左赤枠内の標準報酬に個人負担分の料率を乗じた金額は右赤枠内の保険料です。
(出典:日本年金機構HP「厚生年金保険料額表(平成28年10月分~)」より)
保険料計算式
給与だけでなく、賞与からも保険料は控除されています。
(出典:日本年金機構HP「厚生年金保険の保険料」より)
(4)保険料率は年々上昇
平成16年の法改正により、平成17年から平成29年9月までは毎年上昇します。
厚生年金の場合
2017(平成29)年度9月に18.3%(本人負担:9.15%)になるまで引き上げ(2005年度から毎年0.354%引き上げ)。
国民年金の場合
2017(平成29)年度9月に17,900円になるまで引き上げ(2005年度から毎年280円ずつ引き上げ)。
3.退職後の年金手続き
厚生年金は会社が加入手続きを行うため、国民年金に切り替えが発生する場合のみ自分自身で対応が必要になると覚えておきましょう。
ここでは、大まかな手続きと問い合わせ先を簡単にご紹介しておきます。
(1)ブランクがない場合
年金保険料は月ごとの支払いであるため、ブランクなしで転職する場合は、自分自身での手続きは不要です。
転職先に年金番号や扶養親族の情報を申告すれば、人事担当者が手続きを進めてくれます。
(2)ブランクがある場合
厚生年金から国民年金へは自動で加入切り替えにならないため、自分自身で手続きが必要になります。
(出典:日本年金機構HP「退職後の年金手続きガイド」より)
<ワンポイントアドバイス>
年金機構HPは、玄人向けのつくりなので、該当エリアの「退職後の年金手続きガイド」で不明箇所をクリアにしたうえで、管轄の年金機構窓口に問い合わせることをオススメします。
まとめ
退職後、ブランクがない場合は、年金の手続きは生じないため、手続きの心配は不要です。
一方で、押さえておきたいのが、少子高齢化が進むなかで、年金財源が将来も問題なく確保されているかが不透明である点です。
公的年金の制度の利点を十分に理解したうえで、必要に応じて、確定拠出年金や投資信託などを利用した資産形成の検討が不可欠な時代です。
ゼロ金利が続く限りは預貯金での資産形成は非現実的です。転職のタイミングで将来の経済状況をシミュレーションすることをオススメします。
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