転職時にオファーレターで理論年収を正しく把握する3つのポイント
オファーレターが出た後は1週間程度でサインをするか、辞退するかの選択を迫られます。
せっかくもらった内定なのですぐにサインしたくなりますが、まずは入社後の生活をシミュレーションすることが重要です。
労働契約書やオファーレターに記載されているのは法定上必須の内容の場合があります。その場合は、実際の制度の運用状況や職場内のハウスルールや福利厚生まで理解しておくことをオススメします。
やっしー
今回はその中でも最重要な理論年収を把握するために理解が必須の3項目を解説していきます。
まだ、内定を受諾するかどうかを決めるポイントの整理がついていない場合は、「人事が語る転職で内定受諾を迷った時に必ずチェックすべき5項目」でセルフチェックを進めましょう。
今回のトピック一覧
1. 理論年収にコミッションや残業代は含まれるか?
理論年収をオファー時に提示されますが、計算方法は各社ばらつきがあります。会社によっては、うまくいった場合として提示してくることがあるので、条件を鵜呑みにしないことが大切です。
ワンポイント解説「理論年収とは?」
- 1年で稼ぐことができる想定年収額です。
- 日系企業では平均残業時間から割り出した残業時間をこの金額に含めることがあります。
- 外資系企業(特にセールスの場合)は、コミッション(インセンティブ)を100%もらえた場合を、OTE(On Target Earnings)として示すことがあります。
残業代込みの計算の場合は平均残業時間を確認したほうがいいねー
人事部長のたなかさん
それは間違いないですね!60時間のみなし残業が含まれていますなんて言われた経験があるので^^;時給を計算すると激安になりびっくりしました。
やっしー
うちは日系だからOTEには馴染みがないんだけどどうチェックすればいいのかな?
人事部長のたなかさん
売り上げの達成率の平均・立ち上がりまでの期間のコミッションの保証有無のチェックは重要です。設定された予算がアグレッシブ過ぎて目標を100%達成するのは至難の業になってる場合もあるので。
やっしー
なるほどーそれは読み違えると、入社後の生活設計がまるで変わっちゃうね。
人事部長のたなかさん
特に外資に初めて転職する人は、オファー面談の時にコミッションの支払いサイクル(毎月、四半期、半期)と査定方法(個人業績、チーム業績なのか等)の確認も忘れずにですね!
やっしー
2.転職時の残業代確認はどうする?
理論年収が残業代含むとなっている場合は、想定の残業時間と適用される時間管理のルールを押さえておく必要があります。
時間管理のルールは労働契約に必ず記載される項目なのでどの形態に該当するのかの確認が必須です。
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(労働基準法15条1項より)
主な時間管理形態
基本形は定時制(始業時間、就業時間、昼休みが決まっているもの)です。ただ、業務内容、職種、役職によって以下のルールが適用される可能性もあります。
労働契約書(雇用契約書)に記載の内容をチェックして、残業計算のルールを正しく理解しておきましょう。
フレックスタイム制 | 月間の所定労働時間を超えた場合に残業代支給(1日と週の概念なし) |
みなし残業 | 所定の時間数が基本給に含まれる(所定の時間数を超えた時間数は残業代支給対象) |
裁量労働制 | 時間管理の対象外。そのため、残業代は支給されない。種類は2つ(専門業務型、企画業務型) |
管理監督者 | 人事権を有する管理職は経営者と一体なので残業代の支給なし。名ばかり管理職問題もあるので要注意。 |
使用者(会社)は従業員への安全配慮義務を負っています。そのため、健康を害するような長時間労働は時間管理の対象外であっても、当然に認められるものではありません。
やっしー
割増率も押さえておくとベター
残業代の計算シミュレーションまで採用担当者に聞くのは気がひけることがあると思います。時折、それが原因で「内定取り消しになったらどうしよう」と相談されることがあるほどです。
そんな不安を解消するために、以下のポイントだけ押さえておきましょう。
割増率 | 対象内容 |
25% |
※ 法定時間外+深夜の場合は50% |
35% | 法定休日(特段の定めがなければ、日曜日) |
50% | 月間60時間を超えた残業時間 |
平均月間残業60時間や深夜残業を前提にしたシミュレーションは通常ありえません。特に前者は36協定に違反してしまいます。
やっしー
時給を概算すれば、大まかな残業代の計算はできます。以下の計算例を参考に、あなたも理論年収を計算しましょう。
計算例(月間残業見込み20時間の場合)
- 月間所定労働時間=160時間(8時間×20営業日)
- 時給=2,000円(月給 320,000円÷160時間)
- 割増賃金=2,500円(時給2,000円×125%)
- 月間見込み残業代=50,000円(時給2,500円×20時間)
3.理論年収に賞与(ボーナス)が含まれるかどうか?
最後に、理論年収の内容を正しく理解するには賞与(ボーナス)の取り扱いを知っておくことが重要です。
残念なことに、中途採用担当者で年俸制の定義を正しく理解していない人を散見します。誤った理解に影響されないように以下のポイントを押さえておきましょう。
やっしー
年俸制と月給制の違いとは?
年俸制は年収を12等分して毎月支払う給与形態です。一方で、月給制(日給月給制)の場合は、想定の賞与支給額によって、月給が変わります。
計算式比較(年俸制 vs 月給制)
- 年俸制:月給=年収 ÷12ヶ月
- 月給制:月給=年収÷16ヶ月(夏冬に月給2ヶ月分の賞与見込み)
賞与は業績変動により支給額が変わる可能性があるものです。外資系は年俸制のところが多いですが、日系はまだ月給制も根強く残っています。
やっしー
時間管理と給与形態は別次元の話
転職エージェントや中途採用担当者で給与計算の知識がない人はこの点を勘違いしていることがあります。
「やっしーさんは年俸制なので残業代は支給されません」と言われたことがありました。でも、これは完全な間違いです。年俸制でも時間管理の対象者であれば残業代は支払われます。
やっしー
年俸制は以下のルールを定めているだけで、時間管理の話とは全く関係がありません。
- 年収が固定額(=賞与により変動しない)
- 12分割した額が月給として支払われる
オファー面談や労働条件説明の担当者がイケイケのリクルーターという場合は、労務知識が薄い場合があるので、気をつけましょう。
まとめ
理論年収を正確に把握するためにはオファーレターのチェックと給与計算の最低限の知識が必要です。
ただ、紹介した計算例を当てはめれば、5分程度で終わります。この5分を惜しんで、転職後に想定より低い年収だったと後悔することにならないようにしましょう。
追伸:高年収をチラつかせて応募を増やす会社には要注意!
転職サイトでモデル年収例に一部の成功事例を平均値であるかのように掲載している会社があります。
一方で、理論年収は、各員社内の一部の成功事例をもとに算出するものではありません。そのため、オファーレターをもらった際に提示された理論年収が思っていたよりも低くなるケースがよくあります。
転職はお金が全てではありません。働きがいこそが何より大切です。ただ、年収を平均的なオファー額よりも高く見せるのはブラック企業にありがちなアプローチなので、気をつけましょう。
やっしー