転職でワークライフバランスを見直すための3つのポイント

電通の過労自殺の事件をきっかけにワークライフバランスの重要性を説く声が一層高まってきています。

 

実際には、ワークライフバランスの取り方は人それぞれなので、「残業=悪」ではなく、業務量の調整ができない状態が続くことが本質的な問題点と考えるべきでしょう。

 

特に社員数が少ない会社では担当業務が属人化してしまい、休みたくても休めないということがあります。

 

もし業務量の調整や有給休暇の取得をよしとしない会社の場合は、転職が一番効果的な悩みの解決策になります。

 

そこで、今回は転職でワークライフバランスを見直すためには必要なポイントといくつかのデータをご紹介していきます。



1.残業時間と休暇の取りやすさを見直す

業績が好調で恒常的に人手不足になることはありますが、しっかりとした採用計画があれば慢性的な残業は抑えられます。

 

しかしながら、長時間労働を美徳している会社では、過労による離職に対する課題意識が低く、社員が疲弊しても手を打たないケースもあります。

 

こういった環境にいる場合には、自分なりに理想とする働き方を明確にしてから、転職するのが賢明です。

 

そのために参考になる3つの情報を以下で紹介していきます。

 

(1)労働時間ではアメリカ、韓国の方が長いという結果に

日本は諸外国に比べて労働時間が極端に長いという話題になりがちですが、実際はアメリカと同程度という調査結果があります。

 


(出典:厚生労働省「平成28年版過労死等防止対策白書」より)

 

ただ、ここで注意しておきたいのはアメリカはワークスタイルを選択できる点です。

 

アメリカはエグゼクティブは猛烈に働く一方で、経営幹部を目指さない人は定時に帰宅し、余暇を楽しむとという働き方も選べます。

 

日本の職場のように、上司や同僚の目が気になり、早く帰れない、休暇を取得しづらいというのは独特のプレッシャーといえるでしょう。

 

(2)有給休暇の取得率が極めて低い日本の職場環境

ワークライフバランスの取り方として、は毎日定時に帰るという考えではなく、仕事も余暇も充実させるという考え方も可能です。

 

その場合に、重要になるのが「リフレッシュのために有給休暇を自由に活用できるかどうか?」です。

 

残念ながら、この点では、日本は国際的に見ても最低レベルにあり、うまくリフレッシュできない職場環境であるといえます。

 


(出典:エクスペディア・ジャパン「有休消化率3年ぶりに最下位に!有給休暇国際比較調査2016」より)

 

(3)月100時間を超える残業は過労死認定基準に該当する

厚生労働省の通達では、以下が過重労働による過労死認定の基準として以下の時間数が示されています。

 

    • 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合
    • 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合

(注:ここでいう時間外労働は週40時間を超えた時間数です)

 

いわゆるブラック企業で長時間労働が避けられない場合は、この基準を転職の検討材料として活用しましょう。

 

もし長時間労働が退職理由の場合は、この基準に該当することを証明すれば、自己都合でも会社都合退職と同様のスケジュールで失業給付を受けられることがあります。

 

こういったかたちで、セーフティーネットが張られているので、心身の限界を超える前に次の一手を打てるようにしましょう。

 

2.ワークライフバランスが取れる会社を見つける

自分のなかで理想とするワークライフバランスを実現できる可能性がある会社選びをすることが重要です。

この点は、コーポレートサイトのイメージで判断するのではなく、口コミ情報や面接での逆質問をもとに判断しましょう。

 

具体的な調べ方は、「人事直伝!転職の最終面接までに必要な企業研究方法を完全解説」をご覧ください。

 

具体的には以下の3つのポイントを元に判断することをオススメします。

 

(1)平均残業時間、繁忙期の業務量

「業務のメリハリがつけるか?」がワークライフバランスを取れるかどうかを判断するうえで重要なポイントになります。

 

大まかな残業時間は求人票や転職エージェントからの情報で確認できますが、部門やチームによって事情が異なるため、面接官に必ず質問しましょう。

 

漠然とした質問をすれば、「要求が多そうな人」という印象を持たれてしまい、評価を落としかねません。

 

そのような事態を避けるために、以下のように具体的な質問をするのがオススメです。

 

  • 「繁忙期以外は定時に帰ることがありますか?」
  • 「20時過ぎでもオフィスに残っている人はどれくらいいますか?」
  • 「休日出勤はありますか?」

 

(2)面接官の休暇の取り方(夏季休暇、年末年始休暇を中心に)

業務量の目安をイメージできたら、次に確認したいのがリフレッシュやプライベートの用事の調整のつけやすさです。

 

特に、小さい子供がいて、参観日への出席や急な病気の看護などで休みが必要になる場合は、有給休暇の取得頻度を確認しておきましょう。

 

また、夏季休暇の付与は法律上の義務ではないため、有給休暇を使って取得してもらう会社もあります。

 

オファーレターを見てから驚くことがないように、採用部門長や中途採用担当者との面接の際に確認しておくことをオススメします。

 

(3)人の入れ替わりについて

最後に確認しておきたいのは、定着率についてです。タイミングと相手によっては直接的には聞きづらいので以下の質問例をご活用ください。

    <質問例>
  • 全ての面接官向け:「いつ頃ご入社されたのですか?」
  • 採用部門長・人事向け:「みなさんの在籍年数はどれくらいですか?」
  • 人事向け(オファー段階):「退職率はどれくらいですか?」



3.ワークスタイルの優先順位を整理する

理想とするワークライフバランスが全てかなえば理想的ですが、現実はそうはいかないでしょう。

 

そこで、大切になるのが、①絶対に譲れない条件、②できればかなえたい条件の2つのグループに希望を分類することです。

 

 

条件の優先順位をつけるためには以下の4つのうち、どの条件が時間帯を自由に活用したいかを選択しましょう。

 

  • 終業時間が安定していること
  • 時差出勤が可能であること
  • 有給休暇の取りやすさ
  • 1週間以上の夏休み・冬休み

 

この優先順位づけの際は、退職を考えた理由とセットで考えることをオススメします。嫌なことの裏返しが譲れない条件であることがあるためです。

 

なお、退職理由の整理方法は、「面接で言いづらい本当の転職理由をうまくまとめる秘訣とは?」で詳しく解説しているので、一度、ご覧ください。

 

まとめ

ワークライフバランスの定義は人それぞれで、ライフステージによっても変わってきます。

 

そのため、ブラック企業・ホワイト企業といった評判よりも、自分自身のキャリアのフェーズに合わせて、見直していくことが大切です。

 

また、会社選びの観点では、以下の条件に該当する会社は労働時間が長い可能性があるので、相性をしっかりと見極めましょう。

 

  • 男性比率が極端に高い→産休・育休取得(からの復職)が難しい可能性あり
  • 平均年齢が20代→独身で仕事のみで生活が完結する人が多い可能性あり>
  • 平均在籍年数が2年以下→長期間の勤務には(長時間労働を含めた)相当な努力が必要

 

仕事で成果を出すには健康な身体と精神が必要です。そのためには、家族との時間や休息、社外での学習機会への参加なども大切な時間です。

 

会社はあなたの代わりの人を探せますが、あなたの人生を代わりに生きてくれる人は他にはいません。

 

過度な自己犠牲はキャリアのみならず、人生にダメージを与えることになるので、「自分の身は自分で守る」という考えを持って、仕事選びを進めましょう。

 

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Shin@多国籍組織づくりサポート: 企業人事として早10年、日系ベンチャーや外資系企業で人事系の業務改革や立ち上げに従事。模範的な会社員の働き方が体質に合わず、独立、Iターン転職@札幌、オール外国人の日本法人の立ち上げなど、一度きりの人生なので常に全力投球をモットーに活動中。